■動物の命ないがしろに
「この犬をお願いします」
関東地方のある市の保健所。60代の男性が生後1週間の雑種犬3匹を持ち込んできた。
「子犬たちは処分されるんですよ。それでもいいんですか?」。考え直してほしい…そう願いを込めて説得する職員。しかし男性は「私の勝手でしょう」と冷たく言い放った。
実は男性は数年前から毎年のように、飼っている犬や猫をここへ殺処分に持ち込んでいた。数が増えすぎて手に余ると施設に頼る、という繰り返しだったのだ。
なかなか引き取ろうとしない職員に、男性は顔を赤くして詰め寄った。「なんで受け取ってくれないんだ!」。職員も拳を握りしめ、負けじと言い返す。「去年も持ってきたじゃないですか。避妊手術をしてくださいと、あれほどお願いしたじゃないですか!」
しかし、男性は平然とうそぶいた。「自然のままに育てるのが私の主義なんだ。傷つけるなんて、かわいそうじゃないか」
男性がどんなに理不尽であっても、保健所は結局、受け取らざるをえなかった。「動物の愛護及び管理に関する法律」第35条で、地方公共団体は所有者の求めがあれば犬、猫を引き取らねばならないと義務づけられているからだ。別の職員は「本当は『連れて帰れ!』といいたいですよ。でも、今の法律じゃできないんです」と唇をかんだ。
飼い犬、飼い猫を繰り返し保健所や動物愛護施設へ捨てに来る“リピーター”がいる。犬・猫の殺処分数は年々減少傾向にあるにもかかわらず、ペットの命をないがしろにする身勝手な飼い主は目立ってきている。
動物行政を管轄している自治体では、引き取りを有料にしたり、氏名・住所・捨てる理由を記録するなど、リピーターを防ぐ対策をとっている。福岡市西部動物管理センターによると、他の飼い主への譲渡を勧めるなど殺処分しない方法を探っているが、「『どうしても』といわれたら断ることはできない」のが現状だ。
茨城県の動物指導センターに18年4月~19年8月の間に、飼い犬・猫を複数回引き取り依頼した飼い主は82人。「避妊費用がもったいない」「病気や老衰で介護できない」「飽きた」「鳴き声がうるさいと近所に怒られた」など、身勝手な理由を並べる人が少なくない。センターでは昨年10月、これらの飼い主に「(施設の殺処分は)所有者のあなたが処分することと同じです」と反省を求める手紙を送付したのだが…。
◆◇◆
17年10月、推定10歳のミニチュアプードル、リフトくんが東京都小金井市内の公園で捕獲された。毛は伸び放題で体臭もひどく、両前足の肉がそげて骨が見える痛々しい状態だった。よほどひどい目に遭ったのだろう。栄養失調でガリガリにやせていたにもかかわらず、人に寄りつかず1週間も逃げ回っていた。
自宅に引き取った地域の動物愛護推進員、武岡史樹さんは「半年から1年間はまともな世話を受けていなかったようで、表情や喜怒哀楽を失っていました。客に見せるために顔にバリカンを入れた跡が残っており、ブリーダーが飼育していた可能性が高い」と話す。
武岡さんによると、同様の捨て犬が、時には何匹も公園でさまよっているという。
動物愛護団体「地球生物会議」の野上ふさ子代表は、「(バブル期の)シベリアンハスキーブーム以降、都市部で純血種の捨て犬が増えている」と話す。
最近ではチワワ、ミニチュアダックスフンド、プードル。CMやドラマの影響で“ブーム犬”が生まれる。しかし、ブームが去って商品価値が下がったり、病気や加齢で繁殖に適さなくなった犬を、公園などに繰り返し捨てる業者がいるのだ。
ミニチュアプードルのリフトくんも、もっと小型のトイプードルに人気が移り、繁殖犬として飼われていたのが捨てられてしまったとみられる。「保健所に持っていきすらしない。彼らこそリピーターですよ」と武岡さんは語気を強める。
こうした業者は、名前や住所を偽って処分施設に複数の犬猫を持ち込んだりもする。だが、窓口では身分証明書の提示は義務づけられておらず、業者かどうか確認しているのも全国で49自治体に留まっている。
◆◇◆
日本動物愛護協会の会田保彦事務局長は3年前、東京・六本木のマンションに住む若い女性からの電話に耳を疑った。
「生後1年のマルチーズの里親を探してほしいんです。寂しいから飼ったけれど、彼氏ができていらなくなったから…。保健所に持っていくと殺されちゃうんでしょう?」。動物をぬいぐるみやファッションの小物のように扱い、飽きたら捨ててしまう。すべて自分の都合なのだ。
「純血種を殺処分に持ち込む人は、畜犬登録や狂犬病予防注射など法律で定められた健康管理すら果たしていない人が多い。あまりに短絡的で責任感がなさすぎる」と会田さんは憤りを隠さない。
日本では子供の数よりもペットの数の方がはるかに多い。そして、“ブーム犬”という現象は日本だけのものだという。
「自分勝手な飼い主たちと、それに乗じた一部の悪質なブリーダーのせいで、動物たちがひどい目に遭っています。死ぬまで面倒をみる覚悟があるのか、動物を飼える環境にいるのか、そういう“当たり前”のことを動物を飼う前にきちんと考えてほしい」(田辺裕晶)
◇
《メモ》
全国の保健所や動物愛護センターなどで殺処分される犬・猫は年間約35万3000匹(平成18年度)。過去10年間でほぼ半減している。地球生物会議などがまとめた「全国動物行政アンケート結果報告書 平成18年度版」によると、犬の処分数が多い都道府県は(1)茨城県7249匹(2)沖縄県6399匹(3)千葉県6251匹。猫は(1)愛知県1万2619匹(2)福岡県1万2597匹(3)大阪府1万1518匹-となっている。
■リンパ腫の犬におけるレスキュー化学療法としてテモゾロマイドまたはダカルバジンとアントラサイクリン系の併用の効果
Efficacy of temozolomide or dacarbazine in combination with an anthracycline for rescue chemotherapy in dogs with lymphoma
J Am Vet Med Assoc. August 2007;231(4):563-9.
Nikolaos G Dervisis, Pedro A Dominguez, Luminita Sarbu, Rebecca G Newman, Casey D Cadile, Christine N Swanson, Barbara E Kitchell
目的:再発または難治性リンパ腫の犬におけるアントラサイクリン系抗がん剤との組み合わせで、テモゾロマイドまたはダカルバジンの治療結果を比較する
構成:非無作為コントロール臨床試験
動物:再発性、または難治性リンパ腫の犬63頭
方法:21日サイクルで化学療法を行った。テモゾロマイドとアントラサイクリン系(ドキソルビシンまたはダクチノマイシン)の組み合わせを21頭に投与し、ダカルバジンとアントラサイクリン系を42頭の犬に投与した。効果と毒性を評価した。
結果:テモゾロマイド-アンテラサイクリン系併用で治療した18頭中13頭(72%)とダカルバジン-アンテラサイクリン系併用で治療した35頭中25頭(71%)は、完全または部分寛解した。レスキュー化学療法に対する反応の持続中央値は、テモゾロマイド群で40日(範囲、0-217日)、ダカルバジン群で50日(範囲、0-587日)だった。テモゾロマイド群よりもダカルバジン群の犬のほうが高グレードの血液毒性の発生が有意に高かったが、消化管毒性の発生は両群に有意差が見られなかった。完全または部分反応、レスキュー化学療法に対する反応の持続期間、レスキュー後の生存期間、または総生存期間の犬の割合に関して群間の有意差はなかった。
結論と臨床関連:2つの組み合わせは、再発または難治性リンパ腫の犬の治療に有望であるが、ダカルバジンの投与よりもテモゾロマイドのほうが使いやすく、血液毒性も少ない。(Sato訳)
http://www.geocities.co.jp/AnimalPark-Lucky/4641/ 週刊V-magazine
2月13日7時50分配信 産経新聞
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全国の都道府県が新年度から、動物愛護行政に本腰を入れる。10年後の犬・猫の引き取り数を半減するとともに、致死処分も減少させる。各自治体の「動物愛護管理推進計画」の中身をみると、致死処分数減少の取り組みには、それぞれ違いがあるようだが、飼い主の意識の変化も求められている。(米沢文) 青森県動物愛護センターは平成18年度、計1809匹の犬と猫を引き取り、捕獲・収容されたものを含め計3348匹を致死処分した。 処分が決まった犬たちはその日がくると、ケージから出され狭い空間に追いやられる。職員がスイッチを押すと、密閉された室内に二酸化炭素が注入される。30秒もすると、口の周りを舌でペロペロとなめ、不安を示す行動をとるという。1分後には、背の小さい犬から順に瞳孔を開き、バタッと倒れる。「できればみんな生かしてあげたい…」。職員はこう話す。 ごく一部の動物は新しい飼い主や元の飼い主に譲渡・返還され、命拾いする。犬の場合、人気の高い(1)子犬(2)純血種の小型犬(3)中型犬(4)大型犬-の順に、上位約20頭が選ばれる。また、特に人なつっこい動物は訓練を受けた後、学校や社会福祉施設で子供や高齢者を癒す役目の「スタッフ犬・猫」に転身する。 ■ ■ 15年度から独自に取り組んできた東京都は17年度当時、犬・猫致死処分数を14年度に比べ、41・7%減らした。 今年度から新たに実施している推進計画では、10年後の致死処分数55%減、犬の返還・譲渡率85%以上、猫の返還・譲渡率10%以上-を目指す。 都環境衛生課は「国の指針通り引き取り数を半減できれば、処分数も半減する。譲渡の拡大分を合わせれば、致死処分数は減らせる」としている。 具体的には、(1)終末医療など飼い主の責任の徹底(2)野良猫の避妊去勢手術を行うボランティアを支援する市区町村への補助金(3)譲渡への協力団体を増やす(4)けがをした動物なども譲渡対象とする-などに取り組んでいる。 協力者の負担が増えそうだが、同課は「純血種あるいは雑種が欲しいなど、団体ごとの希望に合わせて譲渡先を振り分ける」としている。 宮城県は致死処分数について、数値目標こそ挙げていないが「引き取りそのものを半減すれば、処分数も減る」としている。30%減を検討中の埼玉県は「これがぎりぎり可能な数字」と話す。 県民から意見を募集中の青森県の計画案は、10年後の致死処分数を犬30%減、猫40%減としている。 県環境衛生課によると、狂犬病予防法に基づき捕獲した犬や、ケガで収容した猫は引き取り数には含まれないことから、「可能な範囲として設定した」という。 同課は「この目標は達成して終わりではない」として、5年後には達成状況を確認し、計画の見直しを行うことにしている。 ■ ■ 政府は来年度地方交付税に総額3億5000万円の「動物愛護管理推進費」を盛り込むことを決めた。引き取った犬や猫の餌やワクチン代に充て、譲渡拡大につなげるのが狙いだ。 しかし、現場が抱える問題は餌代よりも、施設のスペースが限られることと、譲渡成立までの職員への負担が大きすぎることだという。青森県動物愛護センターの藤本道志さんは「譲渡より先に、入ってくる数を減らす“蛇口を締める作業”をしないといけない。不幸な命をなくすには1人1人の自覚が大切。地道な活動を続けるしかない」と話す。 動物を飼うことの責任について考えてもらうため、同センターは昨年、処分施設の見学会を開いた。今後、その回数を増やす方針だ。 空前のペットブームが続く中、人間の都合で命を奪われる動物もいる。厳しい現実から、目をそらしてはいけない。 ◇ ■動物愛護管理基本指針 改正動物愛護法(平成18年6月1日施行)に基づき、環境省中央環境審議会が平成18年10月にまとめた。不妊去勢措置や飼養希望者への譲渡を進め、29年度末までの10年間で、都道府県や政令指定都市での犬・猫の引き取り数を半減することが明記された。このほかマイクロチップリーダーなど個体認識技術の普及、災害時の動物の救護体制の整備などが盛り込まれた。都道府県は指針を受け、10年間にわたる「動物愛護管理推進計画」を策定し、今年4月から具体的対策に乗り出す。 |
最終更新:2月13日7時50分
| 犬猫にもがんのPET診断 放射性物質使用へ規則改正 | '08/2/2 |
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農林水産省は二日までに、人間ではがんの早期発見の手段になっている陽電子放射断層撮影装置(PET)による診断を、犬と猫にも実施可能にする方針を決めた。五月までに、必要な放射性の医薬品が使えるよう獣医療法の施行規則を改正する。 PETを使ったがん検診を受けるには、少なくとも十万円近くかかるとみられるが、ペットが身近になるにつれて人間同様の高度医療の適用を求める声が高まっているのを受けた措置。ワクチンなどの普及で感染症が減り、ペットが長生きになってがんが増えていることも背景にある。 これまで犬、猫のPETによる検査は、放射性物質を使う法的な根拠がないため獣医療界が自制していたが、文部科学省の放射線審議会が先月、動物の種類や入院期間などに条件を付けて認める答申をした。 答申は、放射性物質のフッ素18をがんの標識薬とするPETの診断を犬、猫で容認。周囲の人間の被ばくを考慮し、標識薬の投与後、二十四時間は退院させないとした。 欧米では競走馬の疲労骨折の発見に使われている、放射性のテクネチウム99mを標識薬とするシンチグラフィー検査も馬と犬、猫で認める。 農水省の二〇〇六年の調査では、獣医師系の十六大学のうち十大学が、法が整備されればPET導入を検討すると回答している。今夏の稼働を目指している北里大動物病院(青森県十和田市)が、最初の導入施設となる見通し。 伊藤伸彦いとう・のぶひこ北里大教授(獣医放射線学)は「早期発見し、早期治療につなげたい」と話している。 | |
札幌近郊で捨て犬の保護活動を続けている「愛玩動物を守る会」の上杉由希子さんは毎日のぞくブログがある。6月に「守る会」で運営する施設を巣立った雑種のメス「はる」(推定3歳)の日常を、里親がアップしたものだ。
「はる」は昨年12月、空知管内由仁町の保健所で保護された。以前の飼い主に虐待されていたらしく、人におびえ、施設のさくの隅でうずくまっていた。ぽっかり穴の開いたようなうつろな目でいつも、どこかを見つめていた。「あんなに悲しい目は初めて」
保護して半年後、大阪から北海道に移住してきたばかりの夫婦が「はる」を引き取ってくれた。ブログには逃げても必死に探したこと、病院で検診を受けたことなどが記されている。「はる」が毎日、愛情を受けて表情を取り戻していく様子が伝わってくる。
里親を見つけても、また新たな捨て犬が現れる。そのサイクルは果てることはなく、徒労感に襲われることもある。それでも、幸せそうな「はる」の姿を毎日見ることでまた頑張れる。【岸本悠】
毎日新聞 2007年8月24日 北海道夕刊
Evaluation of primary re-excision after recent inadequate resection of soft tissue sarcomas in dogs: 41 cases (1999-2004)
Nicholas J Bacon, William S Dernell, Nicole Ehrhart, Barbara E Powers,
Stephen J Withrow
J Am Vet Med Assoc. 230(4):548-54(2007)
目的:軟部組織肉腫の不完全切除後の再切除の有効性を、切除創の残存腫瘍の程度と臨床的重要度から調査した。
デザイン:回顧的研究
動物:41頭の犬。
方法:軟部組織肉腫の不完全切除で紹介されコロラド州立大学VMCで再切除を行なったものを調査した。オーナーと紹介獣医師から経過情報を入手した。再切除した標本の検討を行なった。再切除後に放射線治療を行ったものは除外した。
結果:41例が基準に合致し、39例で長期のフォローが実施可能であった。フォローの中央値は816日であった。局所再発は39例中6例(15%)であり、遠隔転移は、39例中10例(10%)で認められた。再切除で正常組織のマージンは0.5~3.5cmであった。残存腫瘍は41例中9例(22%)で認められた。腫瘍、患者、治療方法では、局所再発と関連は認めなかったが、脂肪肉腫、線維肉腫および術前の細胞診の実施は関連があった。
結論ならびに臨床的意義:不完全切除の軟部組織肉腫の再切除は、切除マージンが狭くても実施すべきである。放射線治療や断脚を行わなくても長期的な予後は良好である。再切除した組織に残存腫瘍が見つかったからといって局所再発を示唆するべきではない。(Dr.UGA訳)
関節炎は徐々に悪化していく病気で、軟骨に障害を与え、関節に炎症を引き起こします。
成犬の5頭に1頭が関節炎に罹っていると言われています。
■一般的な関節炎の進行状態
関節にかかる様々な形の物理的負荷が軟骨細胞へダメージを与えることから、関節炎の進行が始まります。
炎症が無い場合でも軟骨細胞の損傷がさらに炎症をおこし、細胞の周囲の組織を壊す酵素を活性化させます。
これによって軟骨の組織が破壊され、最終的には関節の構造や機能に欠陥を引き起こします。
犬の関節炎管理では、炎症を進行性変化を同時に管理することが重要です。
■関節炎の進行の遮断
オメガー3脂肪酸のひとつであるエイコサペンタエン酸(EPA)は犬の軟骨損傷の原因となる遺伝子を抑えるという報告があります。このEPAが軟骨の進行的なダメージを押さえ関節炎の進行を断ち切るカギを握っています。
◎食餌のポイント
オメガー3脂肪酸を多く含む食餌:EPAのようなオメガー3脂肪酸は炎症や関節への損傷を引き起こす酵素を減少させる。
カルニチンを多く含む食餌;カルニチンは筋肉組織を保ちながら、脂肪の燃焼を助け適正体重の維持に役立つ。
グルコサミン・コンドロイチン硫酸を多く含む食餌;軟骨の健康維持に。
降参か成分を強化;ビタミンE・ビタミンC・ベーターカロテンは酸化によるダメージから細胞を守る。
◆ペットロス
◇悲しみ、どう乗り越える--仲間、儀式「克服に効果」
愛するペットのなきがらが、かげろうとなって青空に立ち上る。移動火葬業者「愛ペット動物霊園」(札幌市中央区、根岸昭治社長)が所有する火葬専用車。ペットを亡くした家族の求めに応じて自宅に赴く。トラックの後部荷台に遺体を焼く専用の窯のほか、簡単な祭壇も取り付けており、葬儀から火葬、骨を拾う一連の儀式を取り仕切る。
根岸さんはアパレル業界で働いていた20年ほど前、知人の獣医が「ペットを亡くして、ショックを受ける人が多い」と話すのを聞き、この業態への転身を思いついた。「一通りの儀式ができれば、少しは心も安まるのでは」。関東で開業した後、97年に札幌に移った。
飼い主がペットを亡くした後、襲われる喪失感の総称をペットロスという。ペットの寿命は短いゆえ、死に向かい合う機会が多い。さらに、飼い主がペットの死に過大な罪悪感を感じることもあり、深刻な後遺症に悩むケースもある。根岸さんは「骨はきれいだったから、幸せだったんですよ。この子のために前を向いて」と飼い主を諭すようにしている。
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札幌市東区の主婦、玉木恵さん(46)は04年冬、ともにゴールデンレトリバーの「さんぺい」(9歳、雄)、「もえ」(5歳、雌)を、わずか2カ月の間に突然死で失った。2匹とも病気などの症状はなく、「大切な家族を亡くしたよう。1、2週間はとにかく泣いて暮らした」と振り返る。
玉木さんは愛犬とともに老人施設を訪ね、お年寄りに犬に触れてもらう「ドッグセラピー」の活動をしている。活動を通じて知り合った仲間と、2匹の思い出話をする機会が何度かあった。人目をはばからず涙を流し、悲しみを吐き出していると、少しずつ立ち直れたという。「『楽しい思い出をくれてありがとう』と前向きになれました」
悲しみにくれた冬から2年半が過ぎたが、2匹の骨つぼと遺影はまだリビングにある。遠出する時には、つぼをなでるのが習慣になっている。
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ペットと飼い主の関係に詳しい酪農学園大の内田佳子准教授(伴侶動物医療学)は「以前よりペットとの関係が密接な飼い主が増え、大きいショックを受ける人は相対的に増えている。死は必ず乗り越えられるはず。友人など悲しみに共感してくれる存在や、葬儀のようなセレモニーは悲しみを克服するのに効果的です」とアドバイスする。
一方で、内田教授は「ペットロスという言葉が特別視されるが、愛する対象をなくせばショックを受けるのは当然。精神的に不安定な飼い主の絶対数が増えている。社会生活をきちんと送れる人なら、過剰な喪失感や過度に精神的に不安定な状態に置かれることはない」とも指摘する。=おわり(この企画は鈴木勝一、岸本悠が担当しました)
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■ことば
◇民間業者の台頭
ペットの遺体は札幌市動物管理センター福移支所(北区)に持ち込めば、有料で火葬してくれる。しかし、ペット数の増加傾向に反して、同センターでの処理頭数は微減傾向にある。同センターでは他の動物と一緒に焼かれてしまうため、個別に火葬し、儀式もしてくれる民間の動物霊園に依頼する飼い主もいる。
◆捨てられる動物
◇目立つ飼い主の虐待--殺処分承知で年1200匹持ち込み
愛らしい2匹のウェリッシュ・コーギーが、ボールなど犬用玩具で遊びながら、元気に家の中を走り回る。このうち「サザエ」(推定7歳、メス)は捨て犬だった。飼い主の荒川梗子さん(61)=札幌市北区=は「この子を保護して、本当に良かった。この3カ月でようやく元気になった」と胸に熱いものを感じる。
荒川さんがサザエの里親になったのは、昨年12月29日。趣味が高じて従事している犬用服製作の仕事を通じて、札幌や空知で捨て犬、猫の保護活動をする「愛玩動物を守る会」の存在を知ったのがきっかけだった。
昨年秋に同種の犬を飼い始めたばかりだったが、「守る会」の知人に誘われ、夫憲生さん(61)と同会が運営する保護施設を見学した。この施設にいたサザエは、道内のブリーダーに繁殖犬として飼われ、その後不要になったと見られる。札幌動物管理センターに預けられ、処分される運命だったが、偶然「守る会」に引き取られていた。
体は真っ黒で毛玉だらけな上、悪臭さえ漂っていた。荒川さん夫妻は「こんなかわいそうな姿、放っておけない」とその場で連れ帰った。引き取った後、サザエのこれまでの境遇を象徴する出来事が相次いだ。おりの中でブルブル震えたまま、出てこない。いったん人に触れると、しつようにまとわりつく。むさぼるように餌を食べ、1週間で体重が1キロ増えた。
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殺処分されることを承知で、ペットを動物管理センターなどに持ち込む飼い主は後をたたない。札幌市では昨年度犬が409匹、猫が865匹が持ち込まれた。「同棲(どうせい)相手と飼っていたが、別れたのでいらない」「番犬用に飼ったが、ほえないので引き取って」など無責任な飼い主も多い。
同センターにはスペースに限界もあり、もらってもらえそうな犬はできるだけ、長く保護するよう努める。だが、気性が荒かったり、不人気な犬だと、早々に処分を決めることもあるという。
処分を決断する責任者の一人、高江洲(たかえす)登さん(25)は獣医として、昨年同センターに着任した。「飼育を放棄した人には必ず説得するけれど、ほとんど分かってもらえない。処分を決めるときはやっぱりつらいです」と嘆く。
世間の目に配慮する心配りが不可欠だった社会が変化し、近所づきあいが希薄になるに伴い、飼い主による虐待やしつけ不足などが顕在化している。「愛玩動物を守る会」メンバーの上杉由希子さんは「安易にペットを手に入れられる世の中になり、軽い気持ちで飼い始めて、やがて投げ出すという人が多くなった気がする。ペットは人間がしっかりと生活をしないと、生きていけない」と指摘する。=つづく
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■ことば
◇愛玩動物を守る会
有志の主婦3人が中心になって道央地区で活動している。札幌近郊に保護施設があり、札幌市などの動物管理センターを定期的にチェックし、常時30匹以上の犬や猫を保護。昨年1年間で里親を紹介したのは約100匹に上る。
7月6日朝刊 毎日新聞
◆しつけの重要性
◇トラブル多発、事件も--モラル低く「社会化」遅れ
土曜日の昼下がり。札幌市白石区菊水の豊平川ほとりにある「高橋動物病院」の4階研修室で「ワンちゃんのしつけ教室・子犬の社会化基礎コース」が開かれていた。講師の菊地三恵さん(45)は英国で犬猫の問題行動の治療を学んだカウンセラー。7組12人の飼い主が「伏せ」「立て」「呼び戻し」などコマンド(命令)の基礎を学ぶ。
教室に通う主婦、和田かな子さん(42)は、飼育するキャバリアが他の犬に大声でほえるようになり、近所に迷惑をかけた苦い経験がある。2匹目を飼うにあたり、「もう二度と失敗したくない」と、真剣に飼い犬の「社会化」を考え始めた。同病院の高橋徹院長(59)は「甘やかされた犬は飼い主を見下し、わがままになる」と指摘する。
ペットを飼う人が密集する都会では、おのずから人と動物との距離が近くなり、トラブルが起きるリスクも高まる。菊地さんは「東京では犬を散歩させる空間そのものが狭く、しつけは飼い主の義務との意識が広まっている。北海道は公園や道路が広いせいか、しつけに無頓着な飼い主がまだ多い」と言う。これが「しつけ教室」を05年春に開くきっかけになった。
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ペットを巡るトラブルは、後を絶たない。札幌市動物管理センターに寄せられた「犬に関する苦情」は年間約1200件程度。内訳は「浮浪犬の保護」が約4割と最も多いが、「糞尿(ふんにょう)」「放し飼い」など、飼育されているペットに対する苦情も100件を越している。
事件に発展するケースもある。06年2月、札幌市白石区の公園で、飼育されていた民家のおりから逃げたシェパード2頭が通行人など7人に襲い掛かり、3人が負傷する事故があった。おりの屋根の一部が開いており、雪が内側に積もって犬が抜け出せる状態になっていた。飼い主の男は過失傷害容疑で逮捕された。
このほか、飼っていた犬4頭にエサを与えずに飼育を放棄し餓死させる(05年9月、苫小牧市)▽他人の飼い犬を勝手に連れ帰り、飼い主に発見されると自宅マンションから投げて死なせる(06年8月、札幌市)--など、飼い主のモラルが問われるケースが相次ぐ。
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英国、ドイツ、米国などでは生後3カ月未満の子犬は販売できず、3カ月以上であっても、しつけの経験がない人は買うことができない。日本でも昨年の動物愛護法改正で、離乳前(犬の場合、生後50日前後)の動物の売買に制限がかけられたばかり。菊地さんは「社会性を身につける前の子犬の売買をやめない限り、トラブルは続く。生後6カ月までのしつけが、犬の幸せに影響することを認識してほしい」と指摘する。消費者の欲望に任せるままに巨大化したブームの負の側面を問う声もある。=つづく
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■ことば
◇欧米でのペットのしつけ
犬を「人間のパートナー」と考え、しつけや訓練を重視する。特に英国では犬のしつけに対する意識が高い。犬が問題行動を起こした場合も、原因を探って生活環境を変えて治療するなど、犬と人間が共生するための研究が進む。飼育条件の厳しさが広く認知され、公園でリード(引きひも)をつけずに犬を散歩をさせることも可能。
毎日新聞 2007年7月5日